艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「ここが、本店ですか?」

「そう。案外こじんまりしてるだろ」


もともと、ここで葛城さんのお父さんがパティシエとして開いた一軒のケーキ屋が始まりだったのだそう。高級志向の住人にウケて口コミで客が増え、新店を増やしていくうちにあっという間に今の規模になったそうで。


全国展開して会社を大きくしたのはいいが、その本人がパティシエに戻りたいと言い出し、一人息子の彼が大学を卒業すると同時に業務を引き継いだ。葛城さんは元々パティシエになるつもりもなく、ビジネスの方に興味があったから抵抗なく受け入れられたという。


柔らかな芝生を踏みながら、彼が教えてくれた。


向かう先は、店舗の方ではなくもう一軒の建屋の方で、近づくと木製の看板に「工房」と書かれていた。そこの二階が住居で、一階部分は料理教室などに使っているらしい。
ひどく緊張しながら、私は葛城さんの後についていったのだ、が。
< 269 / 417 >

この作品をシェア

pagetop