艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
お父さんのことを葛城さんは『おっさん』と言っていたけれど、全然そんなことはない。
空気感が彼によく似た、穏やかそうな人だった。顔立ちもよく似ている。


職人気質のうちの父とは、まったく正反対のタイプだ。


明るい奥さんと、穏やかな旦那さま。
そんな雰囲気のふたりに温かく受け入れてもらえ、緊張はすぐに解れた。


夕食もごちそうになり、お父さんに保証人の欄に名前を書いてもらったときは、一歩一歩、結婚に近づけていることを実感し。じん、と目が潤みそうになる。


すべてが、追い風のように思え、もう障害なんかどこにもないような気がしていた。


「……急に結婚するなんていうから。驚いちゃったわよ」


お手洗いを借りて、リビングに戻ってきたときだった。
そんな会話が聞こえて、つい足を止めてしまった。


「良い子だろ。彼女とでないと結婚しないよ俺は」



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