艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
惑わせる者

翌日、彼はまだ微熱気味ではあるものの仕事に出かけてしまった。
しんどくなったら絶対連絡すること、という約束に彼は嬉しそうに頷いていたけれど。
彼は呑気にそんなことで喜んでいるけれど。


よく考えて。具合の悪い旦那様を、他の人の手を借りて病院に、とか絶対嫌だ。
共働きならともかく、私は家にいるのに。


「……旦那様」


脳内の自分のセリフに勝手に照れて、緩んだ口元を手で隠した。
道端をひとりでニヤニヤしながら歩いていたら恥ずかしい。


夕食の買い物が遅れてしまい、急いで帰っているところだった。


というのも、今日は葛城さんを送り出してから、洗濯と掃除を念入りにやっていた。
発熱のせいで汗を含んだ布団を天日に干し、シーツの洗濯もしていると、真夏なので乾くのは早いがやはりそれなりに時間はかかる。

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