艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
柳川さんと別れてから、ぼんやりと考えながらマンションに向かう。
ぐるぐると彼の言葉が頭の中を回り続ける。


能天気だと言われている気がした。頼りある人間ではないと皆に思われている気にも、なってきた。


いつだって、私には何も知らされない。葛城さんは、ちゃんと教えてくれると言ったのに……私には当たり障りない情報だけを知らせているのだろうか。


柳川さんの言葉を丸々鵜呑みにするわけではないけれど……私自身、このままでいいはずがない。


元々は気持ちの伴わなかった政略結婚。信頼を築きつつ、相手の様子も伺わなければいけない関係。それを失念するほどに、彼に溺れてしまっていた自分を恥じた。


考え事をしながらだったからか、いつもはたとえひとりでも「ただいま」と言ってしまうのに、静かに玄関に入ってしまう。足元を見て、頭が徐々に覚醒する。


……帰ってたんだ。


葛城さんの革靴が、綺麗に揃えられていた。

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