艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
葛城さんは確かに隠しごとをしているのだろう。
それでも私は、どうしてもあの人をひどいと思えない。嫌いだと思えない。
私を見つめるあの優しい目は、嘘だとは思えなかった。大切そうに触れてくれるあの大きな手は、ちゃんと温かかった。大事にされている実感が、ちゃんと私を満たしている。
毎日注がれた葛城さんの愛情を、私は心の奥で信じているんだと気が付いた。
「きっと、ちゃんとわけがある。その理由は私を悲しませるものじゃない、絶対に」
ぎゅっと日傘を握りしめ、柳川さんを振り払うチャンスを窺う。
両足を踏ん張った。
背伸びをして高いヒールを履いてきたことを後悔した。
これでは、うまく走れない。