艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~


話を聞いていれば、既に王手はかけられている。縁組に何の意味があるのか。
この問いに、兄は一瞬ぐっと言葉を詰まらせたような気がした。


「お兄ちゃん?」

「いや。なんでだろうな。どっちにしろ、もうどうにもならないんだから、藍は気にしなくていいってことだよ」

「でも」

「できることなんてないだろうが。ほら、明日も俺は早いんだから」


ぽん、と頭を叩かれ話は強制終了させられた。


兄の部屋を出て、自分の部屋に入り灯りを点ける。
ぱぱっ、と蛍光灯の光が部屋を照らし、学生時分のまま時を止めたその部屋を眺めた。両親は店のことばかりで、寂しい幼少時代だったその頃の自分に感情が逆戻りする。
子供の頃から、大人になっても結局、今まで何も出来なかった。


でも今ならもしかして、私にも何かできることがあるのじゃないの?
私だって、花月庵の娘なのだから。


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