艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
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今日の葛城さんは、いつもよりすごく意地悪だった。


ソファで火照った私の身体を宥めるように、濡れた髪をゆっくりと撫で指で梳く。
対面で彼の膝にまたがるように座らされていた私は、あまりのはずかしさと気怠い身体に彼の肩に頭を預けていたのだけれど。


息が整うと、そろりと顔を上げて身体を離す。


「藍? まだ怠いだろう、ベッドまで運ぼうか」


やたらと色気をたっぷり含んだ切れ長の目で見つめられ、そんなことで簡単に私をときめかせてしまう、彼がすごく、憎らしい。


「藍?」


むっと口を噤んだままちょっと睨んで見せたけれど、彼は相変わらず余裕たっぷりで微笑んでいて。
私は悔し紛れに、その表情を崩してしまいたくなった。


だって、今夜の彼は本当に、ひどいと思う。
恥ずかしいって言ったのに、服を着たままとか余計に恥ずかしいことをするし。


あんな、最中に、名前で呼べとか。
ひどいと思う。


ついさっきの情事を思い起こして、かあっと頬に熱を感じた。
ぱぱっと開けたブラウスを整え、恨めしく彼を睨む。
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