艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
もやもやもや。
うずうずうず。


時間を持て余してしまうせいだろうか?
お菓子作りは、今は自戒している。だって圭さんは甘いものが苦手だし、私も妊娠中の急激な体重増加に気を付けて、と言われているから。

だから、本を読むようにしてみたり、色々と工夫はしているのだけど。


玄関で音がした。
ダイニングテーブルに座って文庫本を開いていた私は、音を聞きつけてすぐさま立ち上がる。


「おかえりなさい!」


リビングに入った途端に、飛びつくように駆け寄った私に、彼は微笑む。ソファに近づきビジネスバッグを置いて上着をぽいっと背もたれにひっかけると。


「ただいま」


正面から私を抱きしめた。
うだうだうだ、といろんなことを考えてしまうひとりの時間だけれど、こうして抱きしめてくれる瞬間は、何も考えずにいられた。

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