艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
太ももを撫でていた手が、一瞬強く、私の肌を掴んだ。
それから、深く長く、息を吐き出す。その息と一緒に、熱も吐き出されてしまったようで。
「……藍。そろそろ寝ようか」
欲情の滲まない、ただ優しい声でそう言って、ちゅっと頬を啄んだ。
……。
ぽうっと、余熱を燈したままの自分の身体が、恥ずかしい。
この頃ずっと、こんな感じだ。
最初、妊娠がわかったばかりの時は、お医者様に安定期まではダメだと言われていた。だから、納得はできる。
だけど、安定期に入った後も、彼にそう告げた後もずっと。
圭さんはキス以上、触れてくれなくなってしまった。
えっちがしたい、とか、そういうことではない。
だけど、求められなくなってしまうのはとても寂しい。
男の人は、妊娠した奥さんには気が引けてしまうのかな。赤ちゃんが生まれたあとはどうなるんだろう。
そう考えると、無性に寂しくて苦しくて。
「も、もう少し。キス、したい」
かあっと顔が熱くなるのを感じながら、言った。