艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
深呼吸している間、圭さんとお医者さまが短く言葉を交わす。
圭さんが私の代わりに現状を把握してくれて、いきむタイミングを教えてくれた。泣きながらも必死で頷き、彼の手を必死で握りしめる。

痛みは変わらない。
だけどなぜだか、涙はまだ出るけど泣きたい気分は掻き消えた。
それを数度繰り返した後。
最後の陣痛の波が来た時。

「んんんんっ!」

痛みが消えて、身体が軽くなる。
一気に身体の力が抜けて、肩で大きく息をしながら、意識は懸命に耳を澄ませていた。

今、自分の中から、生まれた命があることがわかっていたから。
数秒ほど後のことだ。
とても元気な産声と。


「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」

お医者さまの声を聞いた途端、私は赤ちゃんと同じくらいの声で泣いてしまった。
同時に私を抱きしめてくれた圭さんの腕の中で。

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