艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
普段なら絶対近寄らないタイプの人だけれど、今はそうも言ってられない。
「……からかわないでください」
『からかってるつもりじゃないんだけどな』
「からかってます。第一、私は真面目に花月庵と葛城さんのことを知りたかったのに、釣書なんか」
『会社のことは必要ないだろう。俺と君とのことを考えるのに』
ツキン、と胸に痛みが走った。
――必要ない
――無関係
昔から、慣れっこのはずの対応。
ここ数日は更に嫌ってほど聞いた言葉だ。
「あなたも同じなんだ。私は口を出すなって?」
両親や兄が、私の将来を考えてそうしてきたのはよくわかっているけれど、そのふたつは思っていたより自分の中で根深い傷になっているようだ。
『藍さん?』
私が黙り込んだのを訝しむ声がする。平静を装って言い返そうとするけれど、悔しさが先行して言葉が出なかった。
たった一度、いや二度、顔を合わせただけのこの人にもそういう扱いをされるって、やっぱり私は誰からも頼りなく見えるのか。私に、ビジネス上のことを話しても意味がないと思われるのか。