艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
だけども、祖母もまた、若いときは花月庵を切り盛りしてきた人だ。その祖母の人を見る目を信じたいとも思う。


覚悟を決めて、一歩踏み出そうとした時だった。


「藍ちゃん!」


声を掛けられ振り向くと、何故かそこに祖母の姿があり、驚いて目を見開く。
着物姿で、コンコースをゆっくりとこちらに歩いてくるところだった。


「お祖母ちゃん! なんで!?」

「なんでって、今日じゃないの?」

「確かにそうだけど……」


もしかして、相談した時に釣書をもらったことも話したから、お見合いという形式で会うのだと勘違いしたのかもしれない。


見た目わかりづらいが、膝の調子が悪い祖母は歩くテンポが遅い。
祖母に歩み寄って手を貸そうとしたが、大丈夫だと手のひらで制された。


「どうやってきたの? 電車?」

「お友達とランチに行くって言ったら康介が送ってくれたわよ」

「お父さんに!?」


それ。
後で知ったら絶対怒り爆発する案件だと思うんだけど!

< 53 / 417 >

この作品をシェア

pagetop