艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「まあいいじゃないの。とにかくいきましょう」

「え、あ、待って」


焦る私をよそに祖母は呑気に歩き出そうとする。
父のことはまあ、もう仕方ないし後で考えるとして。祖母が同席することを葛城さんに伝えた方がいい。もう目の前だから今更だけれど、少しでも早くとバッグからスマホを取り出し操作しようとした。その手を、祖母の手が止める。


「藍ちゃん、いいから」

「え」

「このまま行きましょう」


祖母は、ふふふと可愛らしく笑って、やっぱりゆっくりと歩き出した。何か意図がありそうな表情を訝しみながらも、仕方なく祖母の隣について歩く。
ホテルの入口に差し掛かるとドアマンが気付いて開けてくれていた。


コンコースと同じく、ホテルのロビーもそれほど人はおらず、ゆっくりと周囲を見渡す。
葛城さんの姿は、すぐに見つけることが出来た。


「藍さん!」


今日は少し明るい色のグレーのスーツを爽やかに着こなしこちらに歩いてくる。距離が近くなる途中で祖母に気づいて視線が動いた。



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