艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「いいええ。嬉しかったわ、そのお礼を言いたくて、つい藍ちゃんについて来てしまったのよ」
「そのために? 言ってくださればご足労いただかなくてもお迎えに伺いましたよ。どうぞ、こちらです」
祖母の手を引き、彼がロビーラウンジのソファまで案内してくれる。そこでラウンジの従業員を呼び、祖母と私の希望を聞いてコーヒーをオーダーしてくれた。
飲み物が届くまで数分、他愛ない会話をした後、彼がすっと席を立つ。
「申し訳ありません、すぐに戻りますね」
どこに行くのだろう、と暫く背中を見送っていたが、私も後を追うことにした。
「おばあちゃん、私もちょっと言ってくる」
彼は、店を予約しておくと言っていた。急遽祖母が加わったため、恐らく店にその旨を伝えにいったのじゃないかと思ったのだ。