艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
和やかに食事は進み、最後のデザートを待っている時だった。
「それじゃあ、藍ちゃん。あとはふたりでゆっくりしてちょうだい」
「えっ?」
「私は帰るわね。デザートまではとても入らないわ」
よいしょ、と椅子から立ち上がる祖母を引き留めようと手を伸ばす。
「え、一緒に帰ればいいじゃない。ちょっとだけ待ってよ」
「藍さんと一緒に車でお送りしますから」
当然、葛城さんも立ち上がり祖母を止めようとする。
「この時間にタクシーの手配をお願いしてるのよ。じゃあ、葛城さんにそこまで送ってもらおうかしら」
「それはもちろん……」
「えっ、じゃあ、私も」
祖母が何を考えて今日ここに来たのかわからない。
が、もしかすると葛城さんとふたりで何か、話したかったのかもしれない、とその時に気がついた。
「藍ちゃんはここにいて。デザートが来るのに、店員さんが困ってしまうでしょう」
いつもどおり柔らかい口調だが、断定的な言い方には逆らえないものがあった。