艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
ひとりテーブルに取り残され、暫くすると和三盆のプリンとコーヒーが運ばれてくる。
祖母の分はお断りして、葛城さんが戻って来るのを待っていたが。良く見れば、葛城さんの席にはコーヒーしか置かれていなかった。


もしかして甘いものは苦手なのだろうか。お菓子やさんの社長なのに。


彼がコーヒーだけなら、待たせるよりは今食べておいた方がいいだろうかと添えられていた木製スプーンに手を伸ばす。


タクシーはきっと、一階の駅コンコース側ではなく道路に面した方の出入り口だろう。
だとしてもそれほど遠くないと思うのだけれど。
ただ送っただけにしては遅い、と気になりはじめ、スマホで時間を確認しようとした時だった。


「デザート、プリンだったんですか」


背後から声が聞こえ、振り向けば葛城さんが私の手元を覗き込んでいた。

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