艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「綺麗な庭ですね」
広大、とまではいかないが都心部のホテルとは思えない広さがある。
整えられた玉石は踏むのを躊躇われ、飛び石をひとつひとつ踏んでいく。
小さな池の太鼓橋まで来たとき、葛城さんの手が少々強引に、さっき拒否した私の手を取った。
「藍さんと初めて会ったのも、こんな庭園でよく晴れた日だったな」
「あ……春のお茶会ですよね? 一昨年の」
じっと目が合った、あの時の印象が強烈に頭に残っている。
「そう。あの時、柳楽堂もあの野点に来ていたのを覚えてるかな」
「え?」
思いがけない方へ話が飛んで、きょとんと彼を見上げた。
柳楽堂、といえばどら焼きで有名な和菓子屋だ。そういえば最近、兄からもその名を聞いた。
「……覚えてない、です。私は花月庵として来てたというより祖母の付き添いで」
だからいつも、祖母とそのお友達のおばあさんと話をしたりしていて、他の人とはあまり交流をしていない。