艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「色々打ち合わせとかないといけないこともあるしね、今日はぶっつけだったけど」


うっかりぼうっとなってしまって、葛城さんの言葉が耳を右から左に流れて出ていきそうになる。


……打ち合わせ。打ち合わせ?
あ、単なる打ち合わせってこと?


目の前の艶っぽい表情とそれがかみ合わなくて、ぱちくりと瞬きをした時だった。
真後ろから、ぐいっと帯の結びを引っ張られた感覚があり、後ろへふらついた。


「藍さん!」


慌てたような葛城さんの顔があり、けれど次には私の真後ろに視線が移る。倒れることはなかった。


「これは、どういうことかお伺いしてもよろしいですか」

「あ……お兄ちゃん」


兄が真後ろに立っていて、固い表情で葛城さんを見ている。それから私を見おろしたかと思ったら今度は呆れた顔だった。


「お前は一体何やってんだ、藍」

「え、ええっと」


狼狽えて視線が泳ぐ。


家族への言い訳は、ここへ来るまでにいくつか考えてあった。
コワイのはいきなり父に遭遇することだったが、兄ならまだ難易度Bと言ったところだ。

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