艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「何って、お兄様。好きな人に付き添ってパーティに来ただけだけど」


ふふふ、と笑って口元を隠す。うっかり左手でやってしまった。他の人にはみせびらかすものだが、この場合逆効果だ。
指輪を見て、兄は愕然とした。


「お前っ……こんな勝手なことして親父が」

「お義兄さん」

「あなたにまだそう呼ばれる覚えは」


ふたりに挟まれハラハラしていると、葛城さんが距離をつめてくる。
そして、腰を屈めて顔を寄せた。


「後ろに柳楽堂が来てます。仲違いをしてるように思わせない方がいい」


葛城さんがちらりとだけ視線を投げた、その先には。兄と同じ歳くらいの男の人が立っていた。


兄が、ぐっと言葉を呑み込む。


たったこれだけのことで、兄がだまったということは。
ともかく、柳楽堂が花月庵を狙っていたという話は本物だったらしい。
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