艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

柳楽堂の人だという男の人と、ぱちりと目が合った。
にこ、と笑ってこちらに近づいてくる。


葛城さんが屈めていた腰を戻して背筋を伸ばし、その男の人に向かって一歩前に出た。


「こんにちは、葛城さん。望月さん」


私も姿勢を正して葛城さんの斜め後ろに従おうとしたのだが、それより先に、今度は兄も私の前に出た。なぜか、隠されているような雰囲気で意味が解らず、ふたりの背中を交互に見る。


「お久しぶりです、柳川さん」


葛城さんの言葉で、その人が柳川という人なのだとわかった。


「さっきから噂が一気に広がってますよ。どんな縁組も女性からのお誘いも袖にしてきた葛城さんが、女性と連れ添って来た、と」

「はは、お恥ずかしい」


やっぱり引く手数多どころじゃなく入れ食い状態(公に食ってはいないらしいが)だった様子の葛城さんは、白々しく照れたように頭の後ろを掻いて言う。


「やっと理想の女性に出会えまして、つい浮かれて連れてきてしまったんですよ」


歯の浮くようなセリフが来ました。
恥ずかしげもなく、しかもナチュラルに言えてしまうところはすごい。

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