Jewels
いかにも採掘工らしい、泥だらけの琥珀に、紅玉はさりげなく距離をとった。
気まずさは隠せない。
砂時計の様に積もる沈黙に、更に息苦しくなる。
呼吸ができなくなる前に、琥珀は思い切って紅玉に話しかけた。


「…あの、初めまして、紅玉様。ご機嫌麗しゅう…。」


紅玉は眼も合わせず答える。


「わたくしのことをご存知なの?」

「ええ、一応。金剛の婚約者ということで…」

「金剛!?」


無礼だと言わんばかりに、紅玉が琥珀を睨む。


「いや、その、金剛『様』、の。」

「金剛様と随分親しくしてらっしゃるのね。」

「驚かれましたか。」

「少し。」


相変わらず眼を合わせない紅玉を相手に、琥珀は懸命に話す。


「金剛様はよく採掘場にも顔を出します。採掘工の間では王子としてよりも、一職人として顔が知られているんじゃないかっていうくらいで。」

「そうなの。」

「ええ、中には『随分綺麗な顔の職人だな』くらいにしか思っていないやつもいるんですよ。」


紅玉が微妙に顔を曇らせてゆくことに、話すことに懸命な琥珀は気付かなかった。


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