秘密の約束。
「あの頃の睦月くんはね────。」

先生は話し出した。
話はこうだ。

睦月は5歳の頃にここに来た。
来た時はひどく怯え、誰にも近づかなかった。

父親の殺人現場を見てしまったから。










ある日
睦月は幼稚園からバスで帰ってきた。
いつも来る、大好きな母親が来ない。
睦月は仕方なく、一人でバスを降りて

家まで帰った。

でも帰ってはいけなかった。もう少し遅ければ─


見なくて済んだのに。







「ただいまぁ。」


5歳にしては重いドアを開けながら言った。

だけど返事が返ってこない。

いつもと違う。幼いながらも異変に気がついた。

「おかぁさーん」

愛しい母の名前を呼ぶが電気もついていないし
返事もない。

おまけに変な臭いがする。
耳を澄ましてみると音が聞こえる…。
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