おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
ふたつ目のドアが開いて入ってきたのはまさかの佐藤くんだった。


「おつかれ!」


わたしは驚いて、とっさに時計を見て


「えっ!?早くない?」と言っていた。


佐藤くんはキッチンへ入りこちらを振り返りながら「ただ働き!」と笑った。


「えっ?なんでなんで?わたし大丈夫だよ?」


状況がつかめないわたしは、アタフタするばかりで、心の準備も出来ないまま佐藤くんと2人きりになってしまった事に焦っていた。


「言わなかったっけ?ひとりにしないって」


あまりにサラッと甘いセリフを言うから、チョコレートを口に入れた時の様な幸福感に包まれてしまった。


どんな言葉を返したらいいのかわからず、ソワソワした様子で黙るわたしに佐藤くんは続けた。


「オレの予想だとっ、明日やまうらさんも同じ様に早く来ると思うよ!笑」


悪戯に笑う顔は無邪気で、こんなにジッと見た事がなかったけど…結構いい顔してるなぁ…なんて思いながら平常心を装った。


「そんな事したらただでさえ夜勤長いのに、さらにキツくなっちゃうよ…」


「もし変な客いたら困るっしょ」


佐藤くんはエプロンのヒモをギュッとしめて洗い物をし始めた。
タイムカードは押していないから本当にただ働き…。


「なんか…ごめんね。仕事はわたしがやるから座ってて、なんかあったらその時対応して?」


なんでそこまで?って思ったけど…



-オレはあこちゃんが好きだ-



浮かび上がった文字に自然と顔がポッと赤らんだ。


お店の暇具合いは相変わらずで、いつもの事なのに今日は違った気分になる。

「潤、ちゃんと東京着いたって?」


佐藤くんから出た、潤くんの名前に複雑な気持ちになってしまうわたしがいる。


「着いたって連絡きたよっ」


「寂しいっしょ?」


こんな時…どう答えるんだろう…
なんて一瞬迷いながらも


「でも一週間くらいで帰ってくるから。
そんなに、大丈夫。笑」



そのままの気持ちを声に出していた。


「そうなの?意外とドライじゃん!笑」


自然に笑い合っているけど、佐藤くんの心が今何を求めているのかとか…気になって仕方なかった。


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