おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
それでもやっぱり佐藤くんは会話が上手で、やまやまとはまた違った、キチンとした話ができる人。
専門学校が東京だった話、スノーボードの話、ビデオ屋の話、そして家族の話。


「あこちゃん一人暮らしスゲーね。オレまだ実家暮らしだから、早く出たいんだけど…2人弟いてさ。親父いないし、母親は毎日なにしてるかわかんねぇし…下の弟が高校卒業するまでは見ててやらないとなって思ってさ」


佐藤くんを知る度に背景に触れる度に…胸がギュッとなっていった。


「一人暮らしってさ、自由っしょ?」


好奇心にあふれた眼差しがキラキラと子どもみたいで、何に対しても前向きな人なんだなって…どんどんその世界感に入り込んでしまった。


この日の帰り際、佐藤くんはいつものチョコを直接渡してくれた。
受け取ったチョコを大事に握りしめて、


「ありがとう…
このチョコにすごく助けられてる」


やっと伝えられたヒトコトだった。
佐藤くんは唇を噛みしめながら笑っていた。

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