おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
「さみぃー。あれ?ゆうじは?」

「これから乗せるよっ」

30メートルあるかないかのあっと言う間の距離を進むとまたひとつの黒い影。
止めた車の後部座席のドアが開いて

「相変わらず急!」

と、言う声と同時に冬の夜風が車内に入り込んだ。

「外寒いねっ」

急に呼び出したくせに呑気なのはいつものこと。
慣れた様子で車に乗ったこの2人は簡単にいうと男友達。
男の人で友達と呼ぶのはこの2人だけ。
そのくらいわたしにとっては特別な存在。

なんてったって、中学生の時から今までのわたしの恋愛事情を知り尽くす唯一の2人なのだから。


「あれ?めずらしい曲流してんじゃん」

ゆうじの言葉に自然と笑顔があふれ出てしまう。

「わたしの心は今、冬恋なの」


「他のにしようぜ!笑」

わたしの言葉をスルーして、ゆうじは助手席のしゅんちゃんに曲を変更させようとした。


「ちょっと待ってよぉー、音楽を聴く前にわたしの話を聞いてほしいの!」


「やだぁー」

とふざけるのはしゅんちゃん。
それに便乗して

「めんどくさーい」

と笑いながらも、助手席と運転席の間に顔を出して聞こうという体制に入るゆうじ。

「どうしたんだよ?」


「真剣に聞いて答えてよ!?」


前置きをしたのはわたしの中でも聞くのに戸惑いがある内容だったから。

「早く言えよ」

急かされて、意を決して…


「もしもわたしが、しゅんちゃん…または、ゆうじの事を…実はすごく大好きでした。付き合ってください。
とか言ったらどうする?」


・・・・・


静まり返った車内にキュンとする冬恋のメロディが響き渡る。

「どんな質問だよ!笑」

と笑う2人にわたしはしつこくもう一度聞いてみた。


「お願いします。答えて下さい。
しゅんちゃんならどう?」


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