おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
「フユコイ?フ、フユコイ…笑
聞いたことないなぁ…アーティスト名は?」

アーティスト名をポツリと言うと、


「ヤベー全然聞いたことない。笑
なさそうな気が…..」


なんて微笑みながら、一生懸命検索してくれているその横顔に視線を送る。
無くたっていいのに、ただこの空間だけで幸せなのに。

「待ってね、もう一回探させて」


一回検査をしたけど見つからなかったみたいで、水島くんはまた探してくれようとした。

「いいよいいよ!他の曲でも大丈夫だしさ」

「いや…探したい…」

下唇を噛みしめる真剣な表情に目はくぎ付けになる。

「はっ!あった!あったあった!これ?!これじゃね?」

いきなりボルテージがあがる水島くん。
流れ始めた曲はフユコイだった。

「そう!これこれこれ!」

「すげー!!奇跡!
兄貴ナイスだわ!まじで嬉しい!」


ギアをドライブにサッと入れながら

「兄貴すげーな、本当に奇跡だわ!取りあえず走るね」

と、ボルテージは上がったまま。
流れ進んでいく曲に耳を傾けず水島くんの言葉だけが入ってくる。

「一回も聞いたことないな…
アーティスト名も初めて聞いた。
有名?なにかの主題歌だったり?」

「ううん、妹にね、片想い系の曲でいい曲ない?って聞いたらこれ教えてくれたの。
わたしもそれまで全く知らなかった」


「片想い系の…笑
そんな表現初めて聞いた!笑」

笑う水島くんの横でわたしは続けた。

「聞いたらすごく良くて...
出勤の行き帰りずっとリピートしてるの。」


言い終わった瞬間、我に返って恥ずかしさが襲ってきた。
わたしは今、片想いをしています。
と、告げたような気がして…

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