おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
「めっちゃハマってるじゃん!」

水島くんは曲を最初からかけ直した。

「そんなにいい曲なら、オレもちゃんと聞かなきゃ」

静まり返る車内はフユコイのメロディと歌詞であふれていく。
別にわたしが作った曲でもないのに、心の中を見られているようで、そんなにじっくり聞かないでー!と叫びたくなる。


曲が進むにつれて手に汗をかいていくのがわかる。
わたしは何も言えず、いつもとは全く違う心境でフユコイを聞いた。
何か話すこと…何か話すこと…と考えたけど、出てこない。

「うん。確かに、片想い系だね!笑」

多分ものすごく反応に困っただろうに、優しくそう言ってくれて少しホッとした。
わたしは″うんうん″と頷いて
「聞けてよかった」と伝えた。


「リピートしとくね!」


「えっ!いい、いい、いい、いい!
なんか恥ずかしいし…あっ、あの、みっ…水島くんの好きな曲を聞かせて!」


テンパっているわたしは、この後も可笑しな発言を繰り返していたかもしれない。

辛うじて覚えていることは、走り出して少ししてコンビニで飲み物を買ってもらったこと。
車内では水島くんの好きな曲と、フユコイも頻繁に流してくれたこと。
お互いの学生時代の話や過去のバイトの話。
家族、友達、好きな音楽の話。
5時間を超えるドライブになった事。

職場では話さない、プライベートの水島くんを知れたことがすごく幸せだったけど...
あまり内容を覚えていないのは、緊張のせいだろうか…。
それとも…ドライブ終盤の大きな出来事のせいだろうか。

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