溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
父は若い時から道を外してたらしい。ホステスだった母とはデキ籍、・・・と14の時に出て行く母から聴かされた。以来、父と二人暮らしだった。

自分の父親がどういう人種かも理解できてた。子供の頃は母から繰り返し繰り返し、怖い顔で云い聞かせられたし。

『お父さんの背中にお花が描いてあることは、絶対誰にも言うんじゃないよ。言ったら、この家にも住めなくなるからね』

黙っていないと恐ろしいことが起きると刷り込まれ、いつの間にか感情を表に出せないようになってた。自己防衛本能のようなものだ。人見知りの内気な性格、と周囲には思われてた。かえって好都合だった。
 
両親が離婚した理由は詳しく知らない。母は捨てた過去を振り返らない人なんだろう。・・・会いに来たことは一度もなかった。

父は寡黙な人だった。充分な生活費を渡してくれても、ほとんど家にはいなかったから、思い出らしい思い出がない。

強いて言うなら。高校生になった頃からときどき、外食に誘ってくれるようになった。回らない高級寿司店や高級焼肉店、中華料理店。そしてその時に必ず同席して一緒に食事をしたのが、陶史郎さん。

お世話になってる社長の息子だと紹介されたけど薄々は気付いてた。お世話になってる組の、組長の息子だってことは。
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