王子様と野獣

「もう少し待ってください。入社してすぐ産休取るわけにいかないですもん」

「やだぁ。すぐ妊娠するかなんてわからないじゃない」

「いや、でも」

直ぐしそうなくらいの頻度ですよ。……とはさすがに言えずに口ごもる。
結婚前だから避妊してくれているけど、私もあさぎくんも子供はいっぱい欲しい派だもん。
解禁となればすぐにでも妊娠しそうな勢いだよ。

「……私、本当に嬉しいのよ。浅黄には苦労かけっぱなしだったから。浅黄を幸せにしてくれる人が現れたらいいなってずっと思ってた」

「茜さんとあさぎくんも似た者同士ですね。それ、あさぎくんも言ってました。自分がいるせいで苦労かけたからって。お母さんを幸せにしてくれる人だから、あさぎくんはお父さんのことが大好きなんですよ?」

茜さんはきょとんとした顔だ。

「……そうなの?」

「そうです。でも私思うんですけど、茜さん、あさぎくんがいて幸せだったでしょう?」

「もちろんよ。あの子がいなきゃ私、まっとうに生きてないわ」

「あさぎくんにも、茜さんがいてくれるだけで幸せだったんだと思います。負い目なんて、必要ないと思うんですけど、どうですか?」

茜さんは目を潤ませたかと思うと、立ち上がって私に抱き着いてきた。
む、胸が顔に当たる。すごい巨乳。これは……女の私でもドキドキしちゃう。

「すごいわ、百花ちゃん。やっぱり私、あなたがいい。早くお嫁に来てちょうだい」

「えっと、が、がんばります?」

とりあえず、相手の両親とうまくやれるかなみたいな不安は私にはない。
あさぎくんもだと思う。私の両親はすっかりあさぎくんが気に入っていて、ひとりで帰ると残念がられるくらいだもの。
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