運転手はボクだ
「眠るまで、居てくれてるんだろ?」

「それは…遅くなった時に、布団の横で…、一緒に居るだけですから」

うっかりウトウトしてしまって慌てて戻ってるけど。

「起きたら、えみちゃんは?て。不思議がってるよ。あぁ、朝の事だけどね」

「そうですか」

よく眠れてるんだ。良かった。家が変わると不安な思いもあるだろうから。

「だから、夢だと思ってるのかも知れない、一緒に寝たのは」

「恵未ちゃ~ん」

「あ、社長が呼んでる」

「はい。は~い」


「あ、恵未ちゃん」

「は、い」

もう、後ろに来ていた。

「もういい?話」

特に用があっての話じゃない。一緒の家に居るのに、ゆっくり会ってる時間なんてないんだ。だから…何でもないけど、話したかった気がする。
…一緒に居るのに、別々の世帯で生活をしているんだ。

「はい」

「じゃあ、来て」

「は、い」

何だろう。じゃあ、て、鮫島さんは部屋に戻った。…あ、何だか中途半端な話しか出来なかったな。


「あの…」

これは。
一組の布団が敷いてある。当たり前だ。
…間違いなく、これは私が敷いた物なんだから。

「うん、添い寝して?その団扇で、こう、扇いで欲しいんだ」

は、あ。え゙、添い寝?冗談でしょ?
縁側の障子が開けられていて、サワサワと夜風が吹き込んでいた。

「旦那様…、今夜はいい風が吹いています。団扇は要らないくらいでは」

あ。

「団扇がなくても、添い寝は頼むよ」

薄い掛け布団を捲ると、横になり、手を引かれた。あっ。

「…何もしやしない。こうして…私が眠るまで居てくれたらいいんだ…」

雪崩れ込むようになった体を胸に抱き込められた。

「あの、でも」

ドクドクと社長の心音が耳に響く。これは最早、仕事の域は越えてると思いますが。

「千歳と同じだ。眠ったら居なくなっていいから…頼む」

…最後の頼む、の部分がなかったら、いつものように、何言ってるんですか、と、かわしたに違いない。
だけど、その一言に、何かあったのかと思わされてしまった。

「…解りました」
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