運転手はボクだ
池の金魚は千歳君と金魚すくいをする為だったんだ。
それにしても、やることが…。豪快というか、なんというか。急に思いついたのか、前から考えていたのか…。季節柄…したくなったのかな。
きっと、千歳君の為だ。


みんな揃って玄関を出て、私は見送りに出た。
千歳君は、えみちゃん、て、と言ってギュッと強めに繋いで移動した。えみちゃん、えみちゃんと、名前を何度も呼ばれた。んー、これは何かな…?

社長が車に乗るタイミングで話し掛けた。

「今朝はすみませんでした、バタバタして。
行ってらっしゃいませ」

…元はと言えば社長のせいでもあるんですからね。

「ん。大丈夫だ。業者は午後来る予定だから。なんか不具合があったら連絡して?」

「はい解りました。千歳君、行ってらっしゃい」

しゃがんで頭を撫でた。…あ。お返しになのかな?ギュッと抱きしめられた。…もー、千歳君…。
なんて…可愛いらしいの~。

「いってきます。えみちゃん、サンドイッチおいしかったよ。またぼくにもつくって?」

あ…。こんなところも、気の利くダンディーなお子様だ。フフフ。

「勿論、いいわよ」

「千歳、あれは私の為に作った物だ。次はやらないぞ?」

あ、もう…、直ぐこうやって割り込んでくるんですからね。

「だいじょうぶ。こんどはぼくにつくってくれるやくそくだから」

…もう、どっちが大人なんだか。

「千歳、乗るぞ?こっちにおいで」

「うん!」

抱え上げられた。
鮫島さん…。

「今日も気をつけて、行ってらっしゃい」

「行ってきます」

それぞれに声をかけて見送れるなんて、バタバタするのも…何だかいいかも。


声は聞こえない、バイバイと、千歳君が車の中で手を振っている。手を振り返した。
砂利を踏みしめてゆっくり車が動き出した。
後部座席でチャイルドシートに並んで座ってる社長って。…フフ、今更笑うことでもないのか。何か雑誌を広げて読んでる。あんなところを見ると、社長らしいのかなと思ってしまう。…単純な考え方かな。

さて、と…今夜は金魚すくいか…。
終わったら、また入れ替えってことよね。大変だ。私は大変って事もないのか。大変なのは、暑い中、作業をする業者さんだ。
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