運転手はボクだ
「…素敵。千歳君カッコイイ!」

「フフ。ぼく、かっこいい?」

「うん。かっこいいよ」

「へへ」

「千歳、ととに抱っこしてもらえ。私もそろそろ掬いたい」

「千歳、こっちで。ととと交代だ」

「うん」

鮫島さんの前に来てしゃがんだ。

「よ~し。千歳、今から競争だ。勝った方が、いいな?さっきの約束だぞ?」

「うん!」

約束?何だろう。来るまでに二人で何か決めたのね。

「一匹はハンデだ」

「はんで?」

「千歳が、既に一匹勝ってるってことだ」

「かってていいの?」

「いいんだ。大人と子供だからな、そのくらい」

…大人と子供なら、もっとハンデが多くていいんじゃないです?

「私も初心者だからな…」

にしても。要領は得てるでしょ?

「ほら、千歳、前に居る。ここに来たのを後ろから…そうっと…こうして…」

チャプン。

「やった。とと、すごい!もうとれたよ」

「何?鮫島が掬ったんじゃないだろうな?だとしたらカウントしないぞ?」

「アシストですよ、アシスト。腕を持ってただけです。あ、千歳、また来たぞ」

「うん。しゃちょうとれた?」

「…まだだ」

「ぼく、またとれるよ。…ほら、とれた!」

「何~?」

「とれたっていったの~!フフ。とと、こんどはくろいの」

「よし、…これだな…」

あ~あ、旦那様…そんなむきになって闇雲に追い回しても…掬えるってものでもないのに。ぽいが壊れちゃう…もー見てられないわ。

「…旦那様。…こうやって、岸に向かってでしょ?そっと…でしょ?」

「ん?…ああ。やってるつもりなんだが…」

味方したつもりはないけど、一回きりの指南よ。ま、これもアシスト?
手首の辺りを掴んで寄せた。こんな風にして千歳君に教えてたんでしょうに…。

「お!やった、捕れたぞ、千歳、捕れたぞ。しかも二匹一緒にだ。どうだ」

「えー…」

二匹一緒は偶然入っただけですけどね。

「ハハハ。この調子だと私の勝ちだな。ん?」

ちょっとできたら、もうこの調子。大人気ない…。
だけど、楽しそう。

「大丈夫だ千歳。一匹ずつ確実に取った方が間違いない」

「とと、かてる?」

「あ、競争するなら時間制限、もしくは先に何匹取った方が勝ちとか。社長、どうします?」

「うん、そうだな、あと…10分でどうだ」

「では、私が。はい、今から…残り10分ですよ」

エプロンのポケットから取出し、携帯のタイマーをセットした。
< 64 / 103 >

この作品をシェア

pagetop