運転手はボクだ
「えみちゃん、いってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
「ぼく…」
「ん?」
「なんでもない。ととといいこにしてるから」
「うん。じゃあね」
「うん」
何か言いたげだったけど、隠し事でもあるのかな。
「叶ったか?」
また、そんな簡単な聞き方…。何が、でしょうか。…フフ。
「着物の男性と歩くことですか?」
「フ。ああ」
「叶ってません」
「ん?」
「そぞろ歩くには、団扇を忘れました」
「…フ。扇子ならあるぞ?貸してやろうか?」
「そこまでしようとは…結構です」
「そうか。じゃあ、結局叶ってるじゃないか」
「…何してるんですか…これ」
白く、指が長い手。血管が浮き出て骨ばってる。その手を取って握った。
「ん?」
「はぁ…駄目じゃないですか。これ、痛いでしょ?」
握っていた手を解いて、見せた。
「ん?ああ、これか。大したことは無い」
「あります。そこの公園、行きましょう」
「…いいよ」
「良くないです!こんな綺麗な手なのに。冷やしましょう」
…。
「濡らしてきます。座っててください」
「はいはい」
強引にベンチに座らせた。
「はい、…手、貸してください。ほら、少し赤くなってる…火傷は最初の対処が肝心なんですよ…。直ぐにずっと流水で冷やしておかないと駄目なのに…。はい。応急処置です」
「ん」
「…どうして、こんな事…」
私も、人の事は言えない。社長相手だと言葉が足りない。
「したのかって?余計なお世話、か」
「余計か、お世話か、は、知りません」
「ぁあ?」
「そのお陰で、というか、鮫島さんの気持ちは何となく、解りました。でも…鮫島さんは、千歳君が第一なんです。
旦那様は言いましたよね。鮫島さんとは難しいって」
「恵未ちゃん、今は旦那様は止めようか、プライベートだから。貴史でいいよ」
…。
「貴史さん…。確かに鮫島さんは私を思ってくれてるような反応を見せてくれました。…でも、それは。
例えば、はっきり気持ちを言葉で言ってくれたとして、…それも無いのかも知れませんが。千歳君が私を好きだから、そんな淡い気持ちを壊してしまいたくないって、思ってるんです。子供が、ただ慕ってくれてる思いなのに。その事を凄く大事に考えています。
大人と子供。親子なんですけど、千歳君から私を取ってしまうって思ってるんです。…自惚れてるでしょうか、間違ってるでしょうか」
「うん、行ってきます」
「ぼく…」
「ん?」
「なんでもない。ととといいこにしてるから」
「うん。じゃあね」
「うん」
何か言いたげだったけど、隠し事でもあるのかな。
「叶ったか?」
また、そんな簡単な聞き方…。何が、でしょうか。…フフ。
「着物の男性と歩くことですか?」
「フ。ああ」
「叶ってません」
「ん?」
「そぞろ歩くには、団扇を忘れました」
「…フ。扇子ならあるぞ?貸してやろうか?」
「そこまでしようとは…結構です」
「そうか。じゃあ、結局叶ってるじゃないか」
「…何してるんですか…これ」
白く、指が長い手。血管が浮き出て骨ばってる。その手を取って握った。
「ん?」
「はぁ…駄目じゃないですか。これ、痛いでしょ?」
握っていた手を解いて、見せた。
「ん?ああ、これか。大したことは無い」
「あります。そこの公園、行きましょう」
「…いいよ」
「良くないです!こんな綺麗な手なのに。冷やしましょう」
…。
「濡らしてきます。座っててください」
「はいはい」
強引にベンチに座らせた。
「はい、…手、貸してください。ほら、少し赤くなってる…火傷は最初の対処が肝心なんですよ…。直ぐにずっと流水で冷やしておかないと駄目なのに…。はい。応急処置です」
「ん」
「…どうして、こんな事…」
私も、人の事は言えない。社長相手だと言葉が足りない。
「したのかって?余計なお世話、か」
「余計か、お世話か、は、知りません」
「ぁあ?」
「そのお陰で、というか、鮫島さんの気持ちは何となく、解りました。でも…鮫島さんは、千歳君が第一なんです。
旦那様は言いましたよね。鮫島さんとは難しいって」
「恵未ちゃん、今は旦那様は止めようか、プライベートだから。貴史でいいよ」
…。
「貴史さん…。確かに鮫島さんは私を思ってくれてるような反応を見せてくれました。…でも、それは。
例えば、はっきり気持ちを言葉で言ってくれたとして、…それも無いのかも知れませんが。千歳君が私を好きだから、そんな淡い気持ちを壊してしまいたくないって、思ってるんです。子供が、ただ慕ってくれてる思いなのに。その事を凄く大事に考えています。
大人と子供。親子なんですけど、千歳君から私を取ってしまうって思ってるんです。…自惚れてるでしょうか、間違ってるでしょうか」