運転手はボクだ

成さん…。
前から伸ばされ、近づいた腕に抱きしめられた。…成さん。

「…恵未」

隣りに座り抱き直された。

「…恵未。
話した事、正直に話す。このまま聞いてくれるか」

肩を抱かれた。

「…は、い」

成さんの背中に腕を回した。胸に顔を寄せた。こうして聞いてていいのよね…。

「彼女は…結婚していた。今…穏やかな気持ちで暮らしてるって、言ってくれた。
連絡が取れるのか、正直、解らなかった。でも、…別れたからといって、番号を変えたりするような人ではないと思っていた。ごめん。俺は…消さずに残していたってことだ。…ごめん、その事に今はそれ程意味はなかった。
でも知ったら気にするよな」

男の人はそんなところがあるって、聞いたことがある。成さんも、そのタイプ…。最初は直ぐ消せなかったんだと思う。もしかしたら、があるかも知れないから。言葉通りなら…それからそのままだった…。

「携帯にかけてみた。繋がった。変わってなかったんだ。出てくれた。彼女はそんな人だ。番号を変えたり、拒否したりしない、そんな人だ。
会う約束をした。会って、きちんと話しておきたいと言った。私も、言っておきたい事があるって、言われた」

…。別れて欲しいと言われても、黙って受け入れたんだ。その理由…。

「彼女の家で会った。
俺が妹の子供を引き取った事は、直ぐ知ったって。それが突然の別れの理由だったんだって。
それは同時に、間違いじゃなければ、私との結婚も考えてくれていたって事じゃないかって。そうだとしても駄目になったけどって」

…結婚は考えていたの?って、今、成さんに確認する事では無い。間違いなく考えていただろうから。

「…知って、連絡しようか、悩んだとは言った。それは理由を言って欲しかったから。一人で抱え込んで、自分を悪者にする必要は無かったのにって、言おうかどうか迷ったって。別れてしまった、今更だしって。
でも、聞いていたとして、その上で付き合いを続けて結婚するとなったら、自信がなかったって。冷静に考える時間、別れたからこそ、冷静に考えられたって。
千歳の事…もし、自分の接し方で傷つけてしまう事があったらとか、色んな事を想像したら、…男の子だし、無理だって、思ったって」

男の子…。
血の繋がらない男の子が…やんちゃな、多感な年齢になった事を想像したら、…女性として、不安になったのかも知れない。千歳君は今、まさに思春期だ。
私は、呑気なのか…何も、気にならなかった。最初から触れ合っていたから、だと思う。
今だって変わらず、ちょっと過剰なくらい…スキンシップをしてる。千歳君を恐いとか思った事はない。いざとなったら成さんが居るから。
< 93 / 103 >

この作品をシェア

pagetop