運転手はボクだ

「結婚は遅かったらしい。いつまでもしないから人に勧められたり…やっと結婚する気になって、でも…自分の気持ちを探り探り…、いい人だと思える、この人となら、…包み込んでくれる、…どうしようもなくなった私を許してくれる、そんな人に出逢えたから……主人が、私がいいって言ってくれたから結婚できたって。
子供の事も。…もしも婚姻生活が続けられなくなったらって思ったら、とても不安で考えられなかったって」

それって…心の整理はついてないって事…。今でもまだ思いはあるって事…。

「今、妊娠中よって、言った。…大丈夫だからって、主人が言ってくれたからって。
全部承知の上、引っくるめて、自分が望んで奥さんになってもらったんだからって。…寄り掛かっていいんだからって、言ってくれたから。私、凄く、愛されてるのよって、…言ったよ」

「…成さん」

心を残したまま一緒になった…。成さんはどうなの?…。そんな風に聞いて。

「恵未…好きだよ。俺は自分が今、どんなに幸せか、奥さんに幸せにしてもらってるか話したよ。
沢山惚気て来た」

あ。

「俺の話、俺を信じてくれるか?もう、彼女に対する俺の気持ちは終わってるんだ。恋愛に繋がる思いは全くないよ?
彼女だって、時間はかかったかも知れないが、終わったんだよ。ちゃんと御主人と向き合ったんだ。
会うのは自宅でって言われて戸惑った。結婚してる事、言ってくれてなかったから。昔の…仕返しされたのかな。行くだけ行って、どこかに出て話そうと言うつもりだった。…訪ねたら御主人と出迎えられた。
だから、二人きりでは会ってないから。目の前で見た…雰囲気で解ったよ、とても愛されてた。
御主人も一緒に話したんだ。妊娠もしてるしね、ストレスになる話だと困るだろ?
なあ、恵未」

「はい」

顔を上向かされた。

「出掛けようか」

「え?」

「星を見に行こう」

「え?…長野に?」

「そうだ。流石だな。行こう、今から」

「でも、急には…」

…どうして?…そんな…。帰って来たばっかり。疲れてるのに。

「大丈夫だ。…今日はどっかに行って帰ってくるな、って社長にも言われてる。千歳の事は心配するなって」

「え?そんな事…いつの間に…。社長だって、今朝、何も言って無かったし…ぁ」

抱き直された。…成さん。……あぁ…。

「恵未…好きだ。千歳の事ではなく、それは関係なく、好きなんだ。…こんな風に言うのも遅すぎるか、もっと早く、ちゃんと言えって?…恵未に甘えてたんだな。気持ちは解ってくれてるだろうって。
何年分も…ずっとずっと俺の全部で好きだったんだ。好きという感情は、全部恵未なんだ。
これからだって、社長はちょっかい出してくるだろうけど、恵未はずっと俺のものだ。…いいよな?」

成さんの手が頬に触れた。
私、欲張ってごめんなさい。成さんの心を全部欲しがったりして。でも、嬉しい…。好きだと沢山言われると、素直に満たされます…。

「しげ…」

「誰がちょっかい出すって?」

「社長!」

慌てて離れた。

「全く…人の気配に気がつかないは、鍵もかけないで熱い抱擁か?ま、施錠してあっても鍵は開けられるけどな」
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