four seasons〜僕らの日々〜
浴衣姿の美桜はきれいで、男の子の胸が高鳴る。

蓮たちと別れた後、男の子は美桜に言った。

「よく似合ってる」

「ありがとう」

美桜は嬉しそうに微笑むが、蓮に褒められた時と違うと男の子は感じた。

美桜にとって俺はただの友達なのか……。男の子は美桜の横顔を見つめた。白い頰が赤く染まっている。きっと蓮のことを考えているのだろう。

「何か食べようよ〜!俺、たこ焼き!」

空が笑顔で言う。

「う〜ん…。私はから揚げにしようかな」

美桜が「どうする?」と男の子に訊ねる。優しげに見つめられ、男の子は恥ずかしさで目をそらした。

「………焼きそば」

小さく呟いた。

射的をしたり、くじ引きをしたり、楽しい時間はあっという間に流れていく。しかし、男の子は美桜を見つめていて思う。ずっと蓮のことを想っているんだ、と。

「もうすぐ花火が上がるぞ」

男の子が腕時計を見た。空が「こっちに行こう」と祭り会場から離れた土手に案内する。

「ここならきれいに見えるよ」

空がそう言って、宝石のように輝く星がきらめく夜空を見上げた。しばらくすると色鮮やかな大輪が夜空を彩る。

「……きれい……」

男の子の隣で美桜が呟く。男の子は美桜を見つめた。美桜は花火に見入っていて男の子の視線には気づいていない。

美桜の手がゆっくりと動く。手話だ。手のひらを上向きにした右手に左手を乗せ、右に滑らせる。『きれい』だ。蓮に手話を教えているところを見たことがあるので、男の子も手話が少しわかる。
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