four seasons〜僕らの日々〜
美桜の方が夜空の大輪よりきれいだ。そう男の子は言いたくなる。

そのあともずっと男の子は美桜の優しい横顔を見つめていた。

きれいな雪が、花を咲かせた。



「文化祭、木下さんたち手話ソングするんだって!俺もピアノ担当なんだ」

空がそう言ったあと、男の子はすぐに美桜のクラスへと向かった。

「木下美桜を呼んでくれ」

顔を赤らめる女子に男の子は声をかけた。その女子が美桜に話しかけ、美桜は男の子に笑顔を向ける。その笑顔に男の子の体温が上がった。

「どうしたの?」

「あっ……その……文化祭で、手話ソングをするのか?」

「うん。蓮くんがしたいって言ったの」

『蓮』と聞いた瞬間に、男の子の胸の中に怒りが生まれる。

「……蓮と空とするのか?」

冷静なふりを必死にしながら、男の子は訊ねる。

「ううん。椿ちゃんも一緒」

その名前にも、体が怒りで震えた。どちらも美桜をーーー自分の大切な人を傷つける人だからだ。

「……俺もしたい。……だめか?」

少し緊張しながら男の子が訊ねると、美桜は微笑みながら首を横に振った。

「そんなことない。嬉しいよ」

「……ありがとう」

男の子は微笑んだ。美桜は嬉しそうになる。

「でも、一つだけ頼みがあるんだ」

男の子は真面目な表情で続ける。

「手話はあいつらと一緒ではなく、個別で教えてほしいんだ」
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