four seasons〜僕らの日々〜
その日の放課後も、いつも通りに音楽室で歌う。美桜も時々歌う。その歌声をずっと聴いていたいと蓮は思った。心が癒されて、嫌なことを忘れられる。

「あっ…!なんかいい歌ができそう!」

頭の中に不意にメロディーが浮かぶ。そう言うと、いつも美桜は「本当!?」と嬉しそうに目を輝かせる。その顔を見るのも蓮は好きだ。

「ねえ、美桜ちゃんは僕の歌を聴いてて楽しい?僕はプロじゃないし、つまらないとか思わない?」

目の前で自分が作った歌を楽しそうに聴いてくれる美桜に、蓮は少し疑問に思っていたことを訊いてみた。蓮の作る歌を聴くのは、美桜と椿ぐらいだ。人気の歌手の歌を聴く方が価値があるんじゃないかと時々蓮は思ってしまう。

「プロとか、素人とか、そんなの気にしてないよ。だって蓮くんの作る歌はとてもすてきだと思う。いい歌やいい小説に、プロも素人もないよ!」

その言葉が蓮の心を温めていく。嬉しくて、美桜を抱きしめたくなる。

「……ありがとう」

気持ちを抑えられそうになくて、蓮は赤い顔を美桜から背けた。
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