four seasons〜僕らの日々〜
「……変、でしょ?やっぱり蓮くんの歌の方がすてきだよね」

歌い終わると、美桜は恥ずかしそうに言った。蓮は「そんなことない」と言いながら、右手のこぶしを鼻から前に出す。そして、両手の人差し指と中指を立てて、口の両端におき、両手を斜め上にくるりと上げ、『いい歌』と言った。

「ありがとう!」

美桜も手話で『ありがとう』と言った。

「いい歌だったよ!すてきだった!」

蓮は拍手をしながら、美桜を見つめる。恥ずかしそうにしている姿もかわいい。

「今の歌はね、蓮くんに対する感謝だよ」

美桜が笑顔で言う。

「いつもありがとう!」

次は蓮が照れる番だった。

「いや…僕は感謝されるようなこと、何にもしてないよ?むしろ逆だと思うんだけど……」

「そんなことないよ〜」

二人でずっと顔を赤くして、照れた。その時間はとても甘酸っぱくて、蓮の胸に幸せを作っていく。

放課後の音楽室に、優しいピアノの音が響いた。



「美桜、ちょっといいか?」

春休みがあと一週間となったその日の昼休み、美桜が廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。

「……翔くん」

美桜は少し緊張する。美桜が翔に「幸せになってくれ」と言われた日以来、あまり話していないからだ。
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