カボチャの馬車は、途中下車不可!?
まぁ確かに。どんな天邪鬼だって、反論しようがないほどいい男だけど……
「ラムちゃん彼、かなりレベル高いんじゃ……吾妻拓巳(あづまたくみ)、カレントウェブプランニング代表取締役……って、え、30歳!?」
私より年下だ。それで社長なの!?
がーん、てショックを受けてると、「カレントウェブ?」って坂田が目を上げる。
「知ってるの?」
私が聞くと、あっさり頷かれた。
「主任が注目してるところでしたよね?」
丸岡主任も身を乗り出してきた。
「まだできたてのベンチャーだけど、外資と組んで大きな仕事やってて、噂になってる。いくつか賞も取ってるし。うちも仕事頼んでみたいんだよな」
へぇ……ウェブ系に詳しい主任が認めるなんてすごいかも。
勉強不足だったな。そんなところを見逃していたなんて。
チェックしとかなくちゃ。
「既婚者ってところが残念なんですけどねー。奥さん羨ましいなぁ〜こんなイケメン社長に愛されるなんてっ!」
「あれは愛って言うより、溺愛だけどな。それも、かなり重めの」
笑いを含んだ声がして、私たちは振り返った。
「部長! おはようございまーす!」
「おはよ」
週末を引きずるようだったフロアの空気が、その瞬間を境に、ピシリと引き締まる。
ラガーマンみたいな、四角く張り出した体躯を高級スーツに押し込んだ男性が、ゆったりした足取りでやってきた。
広々したフロアが狭く感じられるくらい、圧倒的な存在感を放つその人が、わが営業部のトップ、新条和馬(しんじょうかずま)部長だ。