カボチャの馬車は、途中下車不可!?
——……く、……ひぃいっく……
ん?
3階でエレベーターを降りるなり、どこからか女性のすすり泣きが聞こえて、私は耳をすました。
学校のように片側に会議室のブースが続く直線の廊下には、見渡す限り人けはなくて、しんとしてる。
そのせいか、泣き声が余計耳ざわりに響く。
——いい加減にしてくれ。
続いて。ちょっとかすれた男の声……
え。
これはまさか……修羅場というやつですかっ!?
好奇心に負けた私は、ドキドキしながら足音を忍ばせて、少し廊下を進んでみた。
——泣けば済むとでも思ってるのか君は。一体いくつだ? 幼稚園児か?
取り付く島もない冷ややかな口調に、足が止まった。
——だって……っく……だって、どうして、っ……なんで、浅井さんの言うこと、信じるんですか!?
——決まってる。彼女の方が信用できるからだ。
——ヒイキです、そんなの! 私だって、私だって……っ!
2人、恋愛関係じゃないな。
これってたぶん、上司と部下……
——君は、私が普段何も見ていないと思ってるのか?
——ひどいっ! 少し私の方が派手な格好してるからって! 私、訴えますよ? あなたより上の人にっ!