カボチャの馬車は、途中下車不可!?
エレベーターで上階へ向かい、段ボールが片側に積みあがった迷路のような薄暗い廊下を抜けると。
その先に、<開発部>と書かれたドアがあった。
「ここで待っててください」と言いおいて、樋口さんがドアの向こうへ消えていく。
——部長、YKDの担当の方が挨拶に見えてるんですが、ちょっとだけお願いできませんか。
うわ。古い建物だからなのか、それほど中が広くないってことなのか、話し声、丸聞こえだ。
かなり緊張するなって、ジリジリと返事を待っていたら。
——私は、言わなかったか。
かすれ気味の声が聞こえた。
ん? あれ、この声……
——担当をコロコロ変えるような代理店は信用できないと、会う必要はないと、言わなかったか?
——いえ、でもせっかく来てくれたし、挨拶だけ……
——無理だな、これから実験結果をチェックしに行かなきゃならない。
バッサリ、遠慮も配慮もぶった切る氷点下の声音。
この、声って……
なんだか、すごく嫌な予感がする。
ペタペタってどこかで聞いたような足音が近づいてきて。
ドアが開く。
そして……私は自分の予感が的中したことを悟った。