カボチャの馬車は、途中下車不可!?

うーん……と曖昧に笑って、視線を下向けた。
そんな人がいないから、一人なんだけどな。

この手の話題は、独り者の方が圧倒的に分が悪い。
美弥子たちが心配してくれるのはよくわかるんだけど……。

なんとか話題を変えられないかと逡巡する私に、美弥子がぐいっと上半身を寄せてきた。
「ねえ、飛鳥んとこの部長はどうなの?」

「新条部長? どうって?」

「男としてって意味」

ゲホッ!
お味噌汁を噴き出しそうになって、ゴホゴホ……胸をどんどん叩いた。

「な、なによ突然!?」

「飛鳥だって大好きなんでしょ? うちの上司は最高だって、よくべた褒めしてるじゃない」

「そそれは……尊敬してるっていう意味でっ」

「仕事ができて、中身もよくて、独身のアラフォー。顔だっていいと思うし。普通意識するでしょ? うちの課にもファンいるくらいだもん」

「あぁ……それはわかるな」
部長はかなり顔が広くて、誰にでも優しくて。
そのくせ浮いた噂は聞こえないからなのか、ものすごくモテる。
バレンタインデーは毎年恐ろしいことになるのよね。

「慎ちゃんから聞いたけど、飛鳥って部内で一番仲いいらしいじゃない。部長と」

「ややややめてよ」
私は慌てて首を振った。
「そういうのじゃないってば! 入社した時直属の上司だったから、話しやすいってだけで……恋愛対象っていうよりは戦友、みたいな。二人で飲みに行っても、色っぽい雰囲気になったことなんて一度もないし——」
目の前の不満そうな顔に気づいて、言葉を切った。

「え……もしかして、それっておかしい?」
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