カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「じゃあ、初回ポスターの500枚は、3週間後に納品させていただきます。私も立ち会いますので」
会議室のデスクに散らばった資料をまとめながら言うと、シックなアッシュ系スーツに身を包んだショートカットの女性が、にっこり微笑んだ。
「ええ、よろしく」
相変わらず驚異の肌ツヤだな。
資料をかばんにしまいながら、私はこっそりとその人、飲料メーカー・サンビバレッジ宣伝部課長・柴田香菜(しばたかな)さんを観察する。
ナチュラルメイクなのに、シミも皺も、全然見えない。
ハリのある肌は健康的な小麦色に輝いていて、これでアラフィフって、年齢詐称じゃないかって思っちゃう。
「そういえば、この前言ってた新商品の件なんだけどね」
切り出されて、私はパッと視線をあげた。
「あ、はい。進んでいらっしゃいますか?」
新商品発売なんて、最高においしいチャンスだから。
関連情報は絶対に逃したくないし、逃せない。
「うーん……それがねえ、発売延期になりそうなのよ。上からのOKがなかなかでなくて」
「そうですか……」
うーん、ちょっと残念。
代わりに、何か別の提案できないかな。
「引き続きプッシュしていきたい季節商品もあるから、何か新しい企画があれば、いつでも声かけてね」
「はい! ありがとうございます」
会社って、本当に千差万別というか、それぞれに独自のカラーがあって。
自分たちの年間スケジュールに沿って、きっちり進めたがるところもあれば、こちらみたいに、割とおおらかに柔軟に、新規の提案も取り上げてくれるところまで、さまざまだ。
前者の仕事は、決められたルールに従うだけだから、失敗も少なく、安定して売り上げを上げられるけど……
やりがいという点では、断然後者に軍配が上がると思うのよね。