カボチャの馬車は、途中下車不可!?
『飛鳥、今どこ?』
甘やかな声が鼓膜を震わせるなり、小さく自分を罵った。
ちゃんと相手、確認してから出ればよかった、って。
お盆を手にせわしなく行きかう店員さんを、壁に貼りつくように避けて、
邪魔にならない位置まで廊下を移動する。
『金曜日は仕事があるっていってただろ。だから会社に電話したのに、もう今日は戻らないって言われてさ。何度メッセージ送っても既読にならないし、心配したよ』
心配? ……どうだか。
今も別の女と、一緒にいるかもしれないじゃない?
あの人、とか……
「表参道で、ちょっと仕事関係の飲み会があって」
ささくれだった心のまま、ぶっきらぼうに言う。
『表参道? なんだ、近くにいるから迎えに行くよ』
「い、いいわよっ別にそんな……」
断ると、電話の向こうでライアンがかすかに笑った。
『心配しなくても、何もしないよ。ただ、会いたいだけ。飛鳥の顔が見たい。いいだろ?』
「っ……」
どうして、そんなこと言うの?
なんで、そんな甘い声で誘うのよ……
「い、いつ終わるかわからないから、今日は無理っ!」
わめくみたいに言って通話を切って。
ずるずるって廊下に座り込んじゃった。
膝に顔を伏せて、小刻みな呼吸を繰り返す。
逢いたい。
でも……ひどい言葉で問い詰めてしまいそうで怖い。
ねえ、あなたの言葉、どこまで信じていいの?