カボチャの馬車は、途中下車不可!?
ぽかんとしてる私の前で、ライアンは自分のパソコン——マックブックだ——をカバンから取り出した。
小さく起動音が聞こえて、ハッとする。
まさか、本気で手伝ってくれようと——!?
「だ、ダメっ!」
彼の手をつかんで、強制的に止めた。
気持ちはありがたいけど、さすがにそれはNGだ。
「どうして? 2人で分担した方が、早く終わるだろう? 明日の朝までに仕上げなきゃいけないんじゃないの?」
「それはそうだけど……」
どう説明しようか考えあぐねる私へ、ライアンは「あ」って悪戯っぽく笑う。
「疑ってるんだろう、僕のテクニック。そりゃ専門は違うけど、これでもデザイン系のソフトは得意なんだよ?」
「う、疑ってるわけじゃないけど。そうじゃなくて、やっぱりまずいと思うから」
「まずい? ……なんでいきなり食べ物の話?」
「そのまずいじゃなくて! いけない、ってこと。プレゼンの資料って、クライアントの経営計画とか広告予算とか盛り込むから、社外秘なの。部外者のライアンにそれを漏らしたり、手伝ってもらったりしちゃダメなのよ」
「……どうせ誰も見てやしないだろ。黙って手伝えば、バレないよ」
無人のフロアを見渡し、ライアンは肩をすくめる。
私は少し考えて……やっぱり首を横に振った。