カボチャの馬車は、途中下車不可!?
午後4時45分。六本木。
私はシェルリーズホテルが入る、ツインタワーの前に立っていた。
2つのビルを結ぶ低層階は、東京どころか日本初進出のお店がいくつも入るショッピングモールになってるって、雑誌で特集されてたっけ。
こんな時じゃなければ、ウィンドーショッピングだけでも十分楽しめたんだろうけど。
残念ながら今の私に、そんな余裕はない。
案内表示に従って、フロントがあるという17階までエレベーターで一気に上がる。
そして、鈍いゴールドの光を映す、磨かれた床に足を踏み出すなり——
「わ……」
無意識に、感嘆の吐息を漏らしていた。
フロアの片側は、全面ガラス張りで。
高層ビルの間に沈んでいく太陽、という大パノラマが広がっていたから。
晴れていたら、もっと圧巻だっただろうな。
ぼうっと見惚れながらロビーを進んでいくと。
次はそのインテリアに目を見張った。
ソファやテーブル、絨毯、絵画、花瓶……
設えのすべてが、普段目にしてるものとはゼロが三つ四つ違うだろう高級感を醸し出していて、圧倒されてしまう。
さ、さすが、七つ星評価の最高級ホテル。
こんな所を待ち合わせに使うとか、どんな奴だろう……
談笑するゲストたちの耳慣れない外国語を聞きながら、よく管理された空調にも関わらず、ジワリと汗がにじむのを感じた。
まさか、本当に御曹司……なんてことは……
……だめだめ!
私はブンブン、首を振る。
気圧されちゃダメだ。
そういう心理的プレッシャーも、きっと相手の作戦の内なのよ。