カボチャの馬車は、途中下車不可!?
どたっ……どどっ……
ドアの外。
半ば転がるようなたどたどしい足音が、次第に大きく、近づいてきて。
そして、崩壊してぽっかりと空いた出入り口の向こうに、男性の姿が現れた。
見たことない人だ。
ブランドものらしい高級スーツに身を包んだ、上品な恰幅のいい中年男性——なんだろうと思う、通常なら。
ただし今は……
ネクタイはほどけかけ、髪はふり乱れ。
汗でテラテラと光る蒼白の顔には、恐怖が張り付き。
それはもう、落ち武者のような無残な姿だった。
「なんだこれは……どういうことなんだっ!!」
もつれ込むように入ってきたその人は、血走った目をこれでもかと見開いて惨状を見渡している。
キョロキョロと我を失ったように彷徨っていた目が、私へと注がれた。
そして背後で私を拘束している都築さんを認めた瞬間。
がっくん、と見事なほど真っすぐ、その顎が落ちた。
「お、まっ……何をっ……!!」
アワアワと声にならない悲鳴をあげながら——駆け寄ってくる!?
え、ちょ……ちょっと待って、ストップ!!
状況見てよっ! 空気読んでっ!
心の叫びが届くはずもなく。
その人はずんずん近寄ってくる——!