カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「日本式の謝罪は、僕には無意味ですよ?」


人を食ったようなライアンの口調に、都築支配人は一瞬鼻白んだけれど。
すぐにおもねるような目を上げた。


「ライアン君、どうかこの通りだ! 今回の不始末は、私が責任をもって片をつける。約束する! どうかどうか、ここはひとつ穏便に、会長には何とぞ——」

「えぇ、僕もそうする方がいいかと思ってました」

穏やかな賛意に拍子抜けしたのか、支配人の全身が、わかりやすく弛緩していく。


「そ……そうか、ライアン君、ありがとう、恩に着るよ!」


「思ってたんですが——」
途切れた言葉尻を追うように、翡翠の瞳が動いた。


その先は、え——……っと、私?


コツコツ……真っすぐ歩み寄ってきたライアンは。

脆いガラス細工を扱うようにそっと私の手を取り、血がにじんだ手首に——優しく唇をつけた。



「……彼女に、手を出したりしなければ」


< 492 / 554 >

この作品をシェア

pagetop