カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「っっ……!!」
ガバッて声のした方を振り向くと。
「らっ、ライアン!」
なんでここに?
涙をぬぐいながら、ワタワタって立ち上がる。
い、いつからそこに、いたんだろう?
どくどくと主張を始める心臓を上から押さえていると、彼は長い足であっという間に近づいてきた。
「ささっきは……ごめんなさい。ちゃんと挨拶、できなくて」
うぅ……調子っぱずれの声が、情けない。
「ううん。気分はもういいの?」
「ん……平気」
なんとか笑顔を向ける私へ。
彼の指が、するりと伸びた——私の頬……涙の跡へ。
触れられたらきっと、もっとリアルに思い出してしまう。
彼の優しさやぬくもりや……
たまらず一歩、後ずさって逃げると。
ぴくっと動きを止めた彼は、行き場を失った手を軽く握った。
その伏せた瞳に、ドキリとする。
なんでそんな……悲しそうな目をするの?